無知は最大の浪費
食の地図には、まだまだ空白がある。
つがる市・木造「桂食堂」――その名は耳にしていた。
だが、ずっとスルーしてきた自分。
まさに愚の骨頂。
人生の一食を損していたなんて。
地元民にとっては日常でも、外から来た者にとっては“新大陸”。
地図にない場所を見逃すな。
それが旅の真価というものだ。
今回はその空白を、確かにひとつ塗りつぶしてきた話。
津軽平野のチャージポイント
旅路の途中、午後2時を少し回った頃だった。
気づけば近辺の食事処は軒並み「準備中」や「閉店間際」の札が並ぶ、食のデッドタイム。
空腹と焦りで目がらんらんとしていたそのとき、
ふと見つけた「桂食堂」の“15時閉店”という一行が、まさに一縷の望みとなった。

控えめながら品のある佇まいを感じられる外観。
写真には写っていないが、店の隣に広めの駐車場有。

座敷席とテーブル席があり、ひとり旅の途中でも、家族連れでも、誰でもふらりと立ち寄れる懐の深さがある。
肩肘張らずに入れるのに、きちんと整っていて清潔感もばっちり。
地元の人の日常使いにも、旅人の一服にも、しっかり応えてくれる空間だ。
木札のメニュー

値上がりの形跡はあるものの、どれもリーズナブルで魅力的
もやしそば ¥800
今回オーダーしたのは「もやしそば」。


琥珀色の餡をまとった煌びやかなもやし。
シャキシャキ感と熱々餡、
そしてシンプルスタイルな細ちぢれ麺
――三位一体の相性は抜群。
ひと口すすれば、
しっかりめの甘みがじわりと広がり、
思わずうっとり。
甘味のまろやかさが癖になる♡
これは、まさに「未知との遭遇」だった。
気付けばスープの中毒性に抗えず、完汁。
本当にレンゲが止まらなかった。否、止められなかったのだ。
ふと思い返せば、妻の目がうっすらと怪しく光っていた気がする……。
あれは、寿命を削る行為に怒っていたのか、それとも美味との遭遇に感動していたのか。
真相は、謎に包まれている。
ただ、あの眼差し――どこかで見た記憶がある。
そう、遮光器土偶のあの目だ。
(つがる市木造といえば、遮光器土偶の出土地。宇宙人説があるのも頷ける。目、光ってるし)
……まさか妻に憑依して?
いや、謎は謎のままがいい時もある。
ただ、これだけは言える。
桂食堂のもやしそば、うまし!
静かに、しかし確かに――
私の冒険手帳に、新たな記録が書き加えられた。(遮光器土偶に見守られながら)
遮光器土偶様。
短命県返上に貢献できなかったことを、どうかお許しください。
ミソラーメン ¥800

遮光器土偶が食したミソラーメン
スープを一口頂いたが、こちらはきりっと系味噌で、疲れた体にしっくり染みる津軽民には懐かしい味。
ラーメン ¥700

すべてのベースとなるラーメン¥700
餡があると無しとでは全く違う表情。あっさりしていて、こちらも完汁してしまう系
チャーハン ¥750

刻みナルトが特徴的🍥
息子氏、一瞬で平らげてしまったので味見できず(笑)
地元民の食事処に、立ち寄るということ
ふと日常に冒険を。
それが、何より贅沢な体験になる。
桂食堂は、そんな日常の“贅沢”をくれる出会いとなった。
結論だけ述べると。
桂食堂のもやしそば、やばかった。
妻の目が光ってた(たぶん遮光器土偶の憑依)。
スープの中毒性に抗えず完汁。寿命は削れど満足度MAX。
この味を、この雰囲気を、見逃さないでほしい。
後日談となるが、この体験をInstagramのストーリーズに上げたとき、思わぬ反響があった。
「五目そば試してみて!」
「タンメンは外せない!」
「えっ、肉そば食べてないの!?」
「かつ丼は試す価値あり」
久しく連絡をとっていなかった地元の友人から、
まったく知らない方からも、DMが次々と届いた。
いや、どんだけ推すねん(笑)
地元民にとっては、言わずもがなの“推し食堂”。
桂食堂はまさに、「これ食え!あれも食え!」と推しが渋滞する、愛される場所だったのだ。
「地元民にとっては当たり前」――
その“当たり前”こそが、遠くから来た者にとっての宝物になる。
食の地図に空白があるなら、あとは自分の足で、ひとつずつ塗りつぶしていくだけだ。
桂食堂――ここに、確かに記録した。
店舗情報
桂食堂(かつらしょくどう)
所在地 | 〒038-3145 青森県つがる市木造千代町98 |
---|---|
営業時間 | 10:30~15:00 L.O.14:45 |
定休日 | 年中無休 (臨時休業の際、店舗内に予め告知あり) |
オーダー | 口頭 |
支払方法 | 現金 |
駐車場 | あり |
備考 | テーブル席、座敷 |
※記事掲載時点の情報です
コメント